もとは違ってアナウンサーの上ずった声が、容易ならぬ臨時ニュースを放送していた。
「帝国政府は、中華民国へ向って航空兵器をこの上輸出する国あらば、これを国防の精神によって、該兵器を没収することを内外に宣言いたしました。これによって対外関係はいよいよ悪化し、帝国政府は遂に宣戦布告を決意したものと見られています。……」
 孤立の日本の上には、もう今日明日に迫って爆弾の雨が降ろうとしているのだ。
「僕は洋服に着換えていよう」
 夫は妻君の方へ、緊張しきった面を向けたのだった。


   米露中からの空襲計画


 ――昭和×年、某国某所のナイト・クラブの一室にて――

「ねえジョン。お前さん、いよいよ出掛けるのかい」
 女は男の膝の上で突然に尋ねた。
「そうさ、メアリーよ。もう命令一つで、|吾が国《ユナイテッド・ステーツ》におさらばだよ」
「大丈夫? 日本の兵士達は強いというじゃないの」
「なに心配はいらない。いくら強くても、わが国の飛行機の優秀さにはかなわないよ。ボーイング機、カーチス機、ダグラス機、こんなに優秀な飛行機は、世界中探したってどこにもない。そして乗り手は、このジョン様だもの、日
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