ちまって、四階から上なんざ影も形もなくなり、その下の方は飴のように曲ってしまって骨ばかりなんだ。そりゃひどいものだよ」
そんな話をしているとき、電灯がパッと消えた。
「あっ、消えた」
「三十秒消えて、また点いて消えて、それからまた点くといよいよ非常管制だよ」
二人の少年は、真暗なところに立って、夜光の腕時計を眺めていた。そのときヒョーヒョーと汽笛は鳴りはじめ、ブーッとサイレンは鳴りだし、警鐘はガンガン、ガン、ガンと、異様な打ち方を始めた。
「いよいよ非常管制だッ」
「さア、大急ぎで、電灯を消しに行こう」
そのとき、天幕の中では、電灯がまた点いた。
「これは消さなくていいね」
「黒い布《きれ》で見えないようにしてあるから、大丈夫だよ」
少年達は、附近の家の窓から、消し忘れた電灯の灯影《ほかげ》が洩れてはいないか。ヘッドライトに紫か黒かの布を被《かぶ》せ忘れている自動車はないか、探しに出かけた。
「非常管制警報が出ましたよオ」
「皆さん。灯火《あかり》を洩れないようにして下さアーい」
この灯火管制がうまく行われているか、いないかによって、敵の航空軍が東京を発見する難易が定《き》ま
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