にちょうだいよ、ネ」
 丁度その時刻、プラット提督は、米国海軍と空軍との有する兵力と訓練と、そしてその精密精巧なる理化学兵器とから見積られるところの換算戦闘力は、日本人の考えているより、十倍近くも強いということを復命書の中《うち》に書き入れた。それは東洋方面へ米国がいよいよ露骨なる行動を開始することを意味するものであった。太平洋の風雲は俄《にわ》かに急迫した。


   わが空軍の配置は


 ――昭和×年四月、九州福岡の三郎君の家庭――

「兄さん、今夜はお家へ泊っていってもいいのでしょう」
「三郎ちゃん。いつ中国の飛行機がこの北九州へ襲来するかわからないのでネ。兄さんは今日は泊れないのだよ」
「そう。つまんないなア。泊って呉れると、僕もっともっと日本の空軍の話を、兄さんに聞くんだけれどなア」
「じゃ、今お話するからいいだろう。しかし一体どんなことが知りたいのかい」
「あのネ、兄さん。僕、この間の夜、中国の飛行機が爆弾を積んで、福岡を襲撃してきた場合には、日本はどこに空軍の根拠地があって、どの方面から来襲する敵国の爆撃隊と戦うのかしらんと思ったら、急に心配になってきたんですよ。兄さん
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