んぞ」
 そういううちにも、博士の身体は、飴《あめ》のようにぐんぐん伸びていった。
 一難さって、また一難である。この分ではやがて博士の身体は、一里にも二里にも伸びてしまうかもしれない。
 そのとき思いがけないことが起った。
 突然博士の身体は、強い風にあおられて、足首を電線にひっかけてしまった。
「失敗《しま》った」
 と思ったとたん、またひとしきりの風がふきつけて、呀《あ》っと思う間もなく、電線は博士の足首を身体からプツリと切り放してしまった。さあ大変!


   大団円


 突風のため、見えざる流体化した清家博士の身体は、電線にふきつけられて、足首のところからちょん切られた。
「しまった。待て!」
 と博士は夢中で手を伸ばしたが、もう遅かった。切れた足首は、どこへ吹きとんでしまったのか、行方が分からない。
 そのうちに、またもや吹きくる強風!
「ああっ!」
 といううちに、今度はビルディングの避雷針で博士の膝頭のところからぶつりと切れてしまった。
 その先に、広告バルーンが揺いでいて、これに胴中を真二つにされた。飛行機のプロペラで、手首や腕が切られ、はては首までちょん切られてし
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