味《きみ》のわるいのは、この部屋の赤や黄を欠《か》く照明と防音装置だった。それにあとで検事たちも気がついたことだが、気圧がかなり低かった、係官のなかには、鼓膜《こまく》がへんになって、頭を振っている者もあった。
博士は、係官を手まねきして、陳列棚の前を一巡《いちじゅん》した。
陳列棚のうちそのドアが開かれて、壁の中におし入れてあるものは、ガラス容器が見られた。検事や警部は、前へ進んで、一生けんめいにその中をのぞきこんだ。
ふたりは、目を見あわせた。
ガラス箱の中には、下の方にかたまったゼラチンのようなものが、三センチほどの厚さで平《たい》らな面を作っており、その上に、つやのある毛よりも細い金属線らしいものがひとつかみほど、のせてあった。
(何でしょうか)
(何だかわからないねえ)
警部と検事とは、目だけでそんなことをかたりあった。
それに類するものが、他のガラス箱の中でも見られた。
警部は検事に耳うちをした。それから警部は針目博士を手まねいた。
「これは何ですか。説明を求めます」
警部が声を出したので――その声はかれ、川内警部にしては低い声だったが、針目博士の顔色をかえ
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