頭痛のするのをこらえているのは、ばかな話だと思った。
検事は、つぎの部屋を見るから案内するようにと、博士にいった。博士は、いす[#「いす」に傍点]からのそりと立ち上がった。
どんな光景が、つぎの部屋に待っていることか。
三重《さんじゅう》のドア
第二研究室へはいりこむのは、たいへんめんどうであった。
ドアだけでも、三重になっていた。
しかもそのドアは、どういう必要があってかわからないが、大銀行の地下大金庫のドアのように、厚さが一メートル近くあるものさえあった。第三のドアが、いちばんすごかった。
それをあけると、がらんとした部屋が見えた。水銀灯《すいぎんとう》のような白びかりが、夜明け前ほどのうす明かるさで、室内を照らしつけていた。
博士は、らんらんとかがやく眼をもって、係官たちの方をふりかえった。そして、自分のくちびるに、ひとさし指をたてた。それからその指で、自分の両足をさした。いよいよ室内へはいるが、無言《むごん》でいること、足音をたてないことを、もういちど係官たちにもとめたのであった。
それから博士は、足をそっとあげて、室内へはいった。
長戸検事も、
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