の行方の捜査のこと。黒箱の中にはいっていた器械をしらべること。こわれた茶釜の行方をつきとめ、その破片をみんな集めることなどが、きゅうを要することだった。
茶釜の破片あつめは、いまとなってはどうにも手おくれで、いたしかたがなかった。あの事件の直後、小屋の中をめんみつに探したなら、破片あつめはあるていど、成功したかもしれないのだがいまとなって後悔《こうかい》しても、もうおそかった。
けっきょく、ちゃんとはっきりのこっているのは、小杉二郎少年が拾ってきて、いま蜂矢の書斎の金庫の中にある一破片だけであった。この破片は、もしや奇怪なる生き返りでもして、家の中をコウモリのように飛びまわりはしないかと、気をもませたものであったが、事実そういうことは起こらなかった。まったくしずかに箱の中にはいっているふつうの金属片にすぎなかった。蜂矢は、はじめはこれが飛びまわるかと、おそれをなしたものの、飛びまわらないとわかったいまは、少々がっかりしているふうであった。
雨谷君も、まず正気《しょうき》にかえって、いまではふつうの人のようになり、退院も間ぢかという話であった。この雨谷君に茶釜の破片を持っているなら、参考のために見せていただきたいと申し入れた。しかし雨谷君のところには、ひとつもないことがわかった。
そうなると、蜂矢の家にある一破片は、いよいよ貴重なものとなった。
ほかの破片は、いったいどこへ行ったのであろうか。
それはたぶん、掃除夫が集めて、塵芥焼却場《じんかいしょうきゃくば》にはこび、そこで焼いてしまったのであろう。むかしなら、そういうときには、金属材料は大切にあつかわれ、横にのけておいて、製鉄所へ回収されたかもしれない。今はもうおそまつにあつかっているので、焼いたあとは、灰の中へうずまり、ますます深く地中へうずもれていったことであろう。
もしもあの茶釜の中に、蜂矢探偵が想像したように、生命のある怪金属《かいきんぞく》がはいっていたものなれば、その生命は、どうなったであろう。
茶釜が破壊したときにいっしょに、怪金属の生命も終ってしまったのであろうか。
いやいや、そうかんたんには断定できないであろう。もともと怪金属は、非常に小さいものであるから、もし茶釜の中にそれがはいっていたとしても、茶釜が破壊したときに、その生命が不運にも二つに折られるようなことは、まずまずないで
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