ょうよ」
 玉太郎は、一同をうながした。
「ああ、出かけようぜ」
 監督ケンが、ダビット技師に合図をおくって、煙草をすった。
 伯爵隊長も、大切な酒入りの水筒を背中の方へまわしてひょろひょろと立ち上った。


   旧火口《きゅうかこう》か


 一行は、ついに問題の崖上の密林の中へ足をふみこんだ。
 せんとうは、もちろん玉太郎の愛犬ポチであった。ポチも一行にだいぶんなれて、むやみにほえなくなった。
「玉ちゃん。あまり前進しすぎると、あぶないよ」
 うしろから監督ケンが注意をする。
 そのうしろには、ダビット技師が、手持撮影機をさげ、のびあがるようにして前方のくらがりをのぞきこんで歩く。
 そのうしろに、伯爵隊長が、猟銃《りょうじゅう》を小脇《こわき》にかかえて、おそるおそるついて来る。
「あッ、大きな穴がある。噴火孔《ふんかこう》みたいな大きな穴が……」
 玉太郎が、おどろいて立ちどまると、前方をさす。
「おお。やっぱりそうだ。あれは恐竜の巣の出入口なんだろう。おい、ダビット。カメラ用意だぞ」
「あいよ」
 伯爵団長が大きな声をあげた。
「ふしぎだ。この前来たときには、こんな穴はなか
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