。
やがて密林がきれた。目の前が急にひらいて、沼の前に出た。むこう岸に褐色《かっしょく》の崖《がけ》が見えている。そこから上へ、例の丘陵《きゅうりょう》がのびあがっているのだ。
ポチの声はしているが、それに近づいたようには聞こえない。
「どこでほえているのかなあ」玉太郎は首をかしげた。
「まるで地面《じめん》の下でほえているように聞える」
「地面の下なら、あんなにはっきり聞えないはずだ。どこかくぼんだ穴の中におちこんでほえているのじゃなかろうか」
「ほえているのは、こっちの方角だが、どこなんでしょう」
玉太郎は沼のむこう岸をさした。
そのときだった。とつぜん大地がぐらぐらっとゆれはじめた。
「あっ、地震だ。大地震だ」
二人はびっくりしてたがいにだきついた。鳴動《めいどう》はだんだんはげしくなっていく。沼の水面にふしぎな波紋がおこった。が、そんなことには二人とも気がつかないで、しっかりだきあっている。
赤黒《あかぐろ》い島
その地震は、三十秒ぐらいつづいて終った。ほっとするまもなく、また地震が襲来《しゅうらい》した。
「あッ、また地震だ」
「いやだねえ、地震とい
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