にあたった。
「ポチ公。おぎょうぎが悪いぞ。ぺッ、ぺッ」
玉太郎は顔をしかめた。ラツールは大きな声で笑った。玉太郎も笑った。生命を拾った喜びは大きい。
恐《おそ》ろしい丘影《おかかげ》
雲がどんどん流れさって、太陽が顔を出した。
太陽の高さから考えると、嵐は五時間ぐらい続いたことになる。
「いったい、どこなんでしょう」玉太郎がきいた。
「さっぱり方角が分らない。太陽が、もうすこしどっちかへかたむいてくれると、見当がつくんだが、なにしろ太陽は今、頭のま上にかがやいているからね」
赤道直下《せきどうちょっか》だから正午には太陽は頭のま上にあるのだ。筏の上に立つと影法師《かげぼうし》が見えない。よく探して見れば、影法師は足の下にあるのだ。
「どっちを見ても空と海ばかり……おや、島じゃないでしょうか[#「ないでしょうか」は底本では「ないでょうか」]、あれは……」
玉太郎は、筏のまわりをぐるっと見まわしているうちに雲の下に、うす鼠色《ねずみいろ》の長いものが横たわっているのを見つけた。
「あれかい。あれは雲じゃないかなあ、僕もさっきから見ているんだが……」
「島ですよ。山
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