みつかったんですか」
「それがよ。恐竜の巣のあたりになるんだ」
「あたりって、モレロ親分は見ないんですかい」
「うん、俺は見つけたわけじゃない」
「で、どうして巣のあたりにあるってことがわかったんです」
「まあ、そんな事位、わからあね、まずセキストンがあの崖の上からのぞいて、喜びの声をあげた。そのとたんに、俺は彼が宝ものがぶじだということを知ったのだと思ったんだよ」
「その次に、奴は縄でおりていったろう、そして慾張りの正体をばくろしたんだ」
「というと」
「他の奴等にとられぬうちに、自分で一人じめにしようと思ってな、それがあの結果さ。縄につかまったまま、落ちていった」
「助かったでしょうかね」
「さあ、そりゃわからねえ、アメリカさんがさがしに行ったが、どうなったか」
「助からぬとすると、ちょっと困りますね」
「何がさ」
「宝のあり場所が」
「馬鹿野郎、だからお前はいつまでも水夫で出世しねえんだ。宝はあるんだ。たしかにあるんだ。セキストンが飛び込んだことが第一の証拠だ。あの辺にあるってことがわかりゃいいじゃねえか」
「でも、可哀《かわい》そうでしたね」
「しかたねえ、一人じめにしようとした罰《ばち》さ、俺はそんなことはしねえ、お前たち二人に手つだってもらったんだ、分け前はちゃんとやるよ」
「ありがとうございます」
「お礼をいうにゃおよばねえよ。働きにたいしてはそれ相当の報酬《ほうしゅう》をうるのは当然じゃねえか。俺はものを合理的に考えるほうだからな」
「さすがはモレロさんだ」
「一つ、やってくれよ」
「ええ、十分に働きますよ」
「さ、もう静かにしようぜ、巣も近づいて来た」
 海上からそそりたつ岩と岩との間を、ボートはたくみにぬってすすむ。
「さ、櫂をあげろ。水の音でも奴等に感づかれちゃいけねえ、ここで少し待とう、風の向きが変らねえと、奴等に感づかれるからな」
 さすがにモレロだ。細心《さいしん》の注意をはらっている。風上から進むことは、人間の匂《におい》を恐竜の鼻に送ることになってまずい。だから風がかわって、風下になってから進もうというのだ。
 船を岩と岩の間にはさませて、三人はしずかに時のうつるのをまった。
 そのうち波がしずかに、せまって来た。
 入江になっているので、波は高くない。
 一時間――二時間――
 猫が鼠《ねずみ》をまつように、気長く、しかも油断なく、
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