れるのを忘れて、その潜水艦が海の中へ潜ってしまえば、小麦粉はもう、永久にサヨナラだ」
「ああ、分かりました」
 ぼくたちは操縦を一生けんめいに練習した。アミール技士は、ぼくたちの熱心さに対し、第一等のことばでほめた。
 ぼくたちが、たいへん熱心なのには、別にわけがあった。それはこの豆潜水艇を手に入れてからあとで、サムとぼくとが、すばらしい計画を思いついたからだ。その計画を思う存分行うためには、豆潜の操縦がうんと上手になっていた方がよいのであった。
 みなさん、ぼくの大計画が何であるかお分かりですかな。
 もうここでお話してしまいましょう。それはね、ぼくたちは豆潜水艇を使って、海の中に恐龍《きょうりゅう》を出すのである。
 恐龍! 知らない人はないでしょうね。
 数千万年前に、地球の上にすんでいたという巨大な爬虫類《はちゅうるい》である恐龍。頭の先から尻尾まで三十何メートルもあるというすごい恐龍。いつだったか、ヒマラヤ山脈のふもとの村にあらわれて、人々をおどろかしたというあの恐龍。トカゲのくびを長くして、胴中《どうなか》をふくらませたような形をして、列車の上をひょいとまたいで行ったという
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