う」に傍点]ガメの甲羅《こうら》などを売っていて、みんなほしくなった。
 サムなんか、もう少しで、一軒の土産もの店を全部買いとってしまうところだった。ぼくはサムを説《と》いて、はじめは見るだけにして、一ぺん全部を見てあるいたあとで、明日にでもなったら、一番ほしいものから順番に買ってゆくことを承諾させた。サムは、しぶしぶそれを承諾したのだ。
 ところが、ぼくたちが海岸に出たとき、ぼくは、せっかくサムにいいきかせた掟《おきて》を自分でぶち破るようなことになった。それほど、ぼくはすばらしくほしいものを見つけたのである。ぼくだけではない。サムもそれを見、その値段のやすいのを見ると、ぼくより以上に、それを買うことに熱をあげた。そのものは、砂浜にゴロゴロと、いくつもころがっていた。それは小型の潜水艇《せんすいてい》であった。二人で操縦《そうじゅう》のできる豆潜《まめせん》なのであった。
 売り主の話によると、これらの小さい潜水艇も、前にはずいぶんこの方面で活躍したそうである。ところがこれらの船を活躍させた国は戦争に負けてしまい、これらの船をたくさん置き放《ぱな》しにして逃げてしまったという。そこで
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