。今はいない。それは、この町のすぐとなりに火山が三つもあって、そのどれかが噴火していて、火山灰《かざんばい》をまきちらし、地震はあるし、ときどきドカンと大爆発をして火柱が天にとどくすさまじさで、こんな不安な土地には総督府はおいておけないというので、ほかへ移したんだそうな。
 この町の、世界ホテルというのに、ぼくとサムは宿泊することになった。名はすごいホテルだが、実物はやすぶしんの小屋をすこし広くしたようなものであった。ただ、縁《えん》の下だけはりっぱであった。人間がたったままではいっても、頭がつかえないのである。
 縁の下が、こんなにりっぱにこしらえてあるのは、この地方は暑いから、こうしておかないと床の下からむんむんと熱気があがってきて、部屋の中にいられないそうな。
 だが、サムもぼくも、そんな縁の下があっても、やっぱり暑くて、ホテルの部屋の中にじっとしていることができなかった。そこで二人して、さっそく町を見物に出た。
 町には、貝がらだの、珊瑚《さんご》だの、極楽鳥《ごくらくちょう》の標本《ひょうほん》だの、大きな剥製《はくせい》のトカゲだの、きれいにみがいてあるべっこう[#「べっこ
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