やれ助かった」と思った。ぼくたちは艇をとび出して、水を渡って海岸の砂の上に馳けあがり、気のゆるみで二人とも、人事不省《じんじふせい》に陥《おちい》った。
 ぼくたちは知らなかったが、近くにいた人々は胆《きも》をつぶしたそうな。そうでもあろう。全速力で恐龍が海岸めがけて押し寄せて来たと思ったら、浅瀬にのしあげ、中から二人の少年がとび出してきて、砂の上でひっくりかえってしまったんだから。
 ホテルでも、ぼくたちが三日三晩も、もどらないものだから、恐龍にさらわれたにちがいないと、手わけして探していたそうである。
 ぼくたちは運よく生命を拾《ひろ》って、本国へもどることが出来た。いろいろ大損害もしたけれど、その後「恐龍艇の冒険」だの「恐龍を見た話」などを放送したり、本にして出版したりしたので、たいへん儲《もうか》って金もちになった。このつぎの休暇《きゅうか》には、日本へ行ってみたい。こんどサムに相談してみよう。



底本:「海野十三全集 第13巻 少年探偵長」三一書房
   1992(平成4)年2月29日第1版第1刷発行
入力:海美
校正:もりみつじゅんじ
2000年1月22日公開
2006
前へ 次へ
全25ページ中24ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング