出ると、主要航路にぶつかるんだ。つまり、このへんだ。この主要航路に待ってりゃ、かなり大きい汽船が通ると思うよ。三十マイル往復はちょっと骨が折れるけれど、明日はやってみないか」
「ふーん。やってみよう」というわけで、翌日はエンジンを全速にはたらかせて遠出をした。
ぼくもサムも、昨日と今日の見張で、すっかり陽に焼けて、黒くなってしまった。
「ここもだめじゃないか」ぼくがいった。
「いや、気永《きなが》に待たなくちゃだめだよ。世界中の汽船がここに集まってくるわけのものじゃあるまいし、もっとがまんすることだ」
と、サムは大人のような口をきいた。
しかし、彼もやっぱりつまらんと見え、その日|帰航《きこう》の途についたとき、
「まだ、店開《みせびら》きをやっていないんだから、これから小さな船でもなんでも見つけ次第、一度おどかしてみようじゃないか」と、いった。
「うん、それがいい。よし、第一の犠牲船《ぎせいせん》を見つけてやるぞ」
ぼくは見張りについた。
港まで、あと海上三マイルというところで、ぼくは五、六艘のカヌーが帆を張って走っているのを認めた。一日の漁をおえてギネタの港へもどっていく現地人の舟であった。
「見つけた。六隻《ろくせき》よりなる船団《せんだん》!」
「えっ、六隻よりなる船団だって。おい、よく見ろよ。それは艦隊じゃないのか。艦隊をおどかしたら、大砲やロケット弾でうたれて、こっちはこっぱみじんだぞ」
サムはおそれをなしている。
「よく見た。六隻よりなる船団なれども……」
「なれども――どうした」
「帆を張った現地人のカヌーじゃ」
「なんだ、カヌーか。カヌーじゃ、おどかしばえもしないが、店開きだから、やってみよう」
そして、かねての手筈《てはず》どおりやった。すぐさま恐龍号は潜航にうつり、カヌー舟団を追い越した。そして、ぬーっと浮上《ふじょう》にうつったのである。恐龍はかま首をもたげ、ゆらゆらとふりながら、現地人の、カヌーをにらみつけた。
どぼん、どぼん。ばたん、ばたん。
きゃーっ。きゃきゃーっ。
えらいさわぎだった。現地人たちは、手にしたかい[#「かい」に傍点]をほうり出し、大急ぎで海中にとびこんだ。
ぼくたちは、潜望鏡《せんぼうきょう》でこの有様を見て、おかしくて涙が出て、とまらなかった。
あまり永く恐龍の姿を出していると、正体を見破られる
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