さわぎになるだろう。
ぼくたちは恐龍の目玉の中にとりつけてある写真機で、汽船のさわぎをいく枚も撮っておく。そして当分知らない顔をしているのだ。そして、夏休みがすんだ頃、“恐龍艇の冒険”と題する例の写真を発表して、全世界をげらげらと笑わせてしまおうというのだ。これが正直なところ、サムとぼくが考えた大計画の全部だった。
ぼくたちは、この計画に必要な恐龍の頭部を設計し、航空便で本国に注文した。ぼくは、そういうものを製作している工場を前から知っていたのだ。その工場からはすぐ返事が来た。おそくも七日目には完成して、航空便でそちらへ送ると書いてあった。
サムとぼくは、顔を見合わすと、うれしくなって、その場に踊り出した。
恐龍艇《きょうりゅうてい》のりだす
それから十日の後に、ぼくたちは、恐龍の頭部の作り物の荷物を受け取った。
思いのほか小さいものであった。といって一メートル立方ぐらいの箱にはいっていた。ぼくたちは、ホテルの一室で、扉に鍵をかけ、この秘密の荷物を取り出した。
すばらしい出来具合の恐龍の頭部が出て来た。さすがにあの工場だ。そしてぼくたちの設計よりもずっとかんたんに便利に、優秀に仕上げてあった。
この恐龍の頭部をつくり上げている材料になるものは、目のこまかい鎖網《くさりあみ》であった。その上に絹製《きぬせい》の防水布《ぼうすいふ》と思われるものがかぶせてあり、これが、恐龍の皮膚と同じ色をし、そして上の方には目もあり口もあるのだ。たたみこむと、わずか一メートル立方の箱の中にらくにはいってしまうが、取り出してふくらますと、すばらしくでかいものになる。
恐龍の目の中に、写真機がとりつけられるようになっていた。その外、ぼくの設計にはなかったが、恐龍が首を上下左右にふることのできる仕掛がついていた。それはあやつり人形と同じような仕掛で、何本かの鎖《くさり》が下に垂れていて、それを滑車《かっしゃ》とハンドルのついた巻取車で巻いたり、くり出したりすればいいので、この鎖はマストの中を通って艇内へ入れるようにと注意書きがしてあった。
とつぜん扉がノックされた。
鍵がかかっているので安心していたら、扉はがたんと開かれ、ボーイがはいって来た。
「きゃーっ」ボーイは、ベットのシーツをその場にほうりだして、逃げていった。
「しまったね。見られちゃったね」
「扉の鍵
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