うネ」
「ええ、確かに吸血鬼です。この抉《えぐ》りとられたような頸《くび》もとの傷、それから紫斑《しはん》が非常に薄いことからみても、恐ろしい吸血鬼の仕業《しわざ》に違いありません」
「すると、痣蟹が吸血鬼だという君のいつかの断定《だんてい》は撤回《てっかい》するのだネ」
 捜査課長は検事の面《おもて》を黙って見詰めていたが、しばらくして顔を近づけ、
「おっしゃる通り、痣蟹が吸血鬼なら、こんな殺され方をする筈《はず》がありません。吸血鬼は外《ほか》の者だと思います」
「では撤回したネ。――すると本当の吸血鬼はどこに潜《ひそ》んでいるのだ。もちろん大江山君は、吸血鬼が覆面探偵・青竜王だとはいわないだろう」
「もちろんです。――実をいえば、私は最初吸血鬼は痣蟹に違いないと思い、次に青竜王かも知れぬと思ったんですが、両方とも違うことが分りました。外に怪《あや》しいと睨んでいるのは、最初の犠牲者四郎少年の兄だと名乗る、西一郎だけになるのですが……」と、其処《そこ》まで云った課長は急に口を噤《つぐ》んで、あたりを見廻わした。それは冒険小説に出てくる孤島《ことう》の洞窟のような実に異様な光景だった
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