恐怖について
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「ジヤン/\」は底本では「シヤン/\」]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)アレヨ/\と見てゐる間に
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恐怖なんて、無くもがなである。
――と片づけてしまふ人は、話にならない。恐怖は人間の神經を刺戟することが大きい。ひどい場合は、その場に立ち竦んで心臟痲痺を起したり、或ひは一瞬にして頭髮悉く白くなつて白髮鬼となつたりする。そんな恐怖に自分自身が襲はれることはかなはんが、さういふ恐怖がこの世にあることを聽くのは極めて興味深い。探偵小説が喜ばれる一つの原因は、恐怖といふものが盛られてゐることに在る。
探偵小説を好む私として、恐怖に魅力を感ずるのは、當然のことであらう。今日は一つ、平生私の感じてゐる恐怖の實例をすこし拾つて、同好の諸君に捧げようと思ふ。
私は踏切を通ることが恐しい。うちの近所には、番人の居ない踏切があつて、よく子供が轢き殺され、「魔の踏切」などと新聞に書きたてられたものである。あすこへ行き掛
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