に感じたほどだつた。ブル/\と上へ昇つてみると、鼠色のペンキを塗つた幅の狹い梁木が、もう半ば腐りかけてゐた。この次、渡されるまでに、腐り落ちてしまはないかナと、いつも思つたことだつた。
同じ屋根の下に暮してゐる同僚なのだが、暫く顏を合はせない。そのうちに、向からヒヨツクリやつて來て、急になれ/\しく話を始める。無論親しい同僚のことだから、なれ/\しく話を始めたつて一向不思議でない。しかしそのときこつちでは盛んに喋る同僚の顏を不圖見て、急に駭く。同僚の顏がまだ一度もこれ迄に見たことのない顏に見える。サアさうなると、俄かにその同僚が恐ろしくなる。逃げようとするのだが、逃げられない。全身が竦んでしまつたのだ。恐ろしさに、私はブル/\慄へだすことがある。
「フランケンシユタイン」といふ映畫を見たときのことだ。フランケンシユタイン博士が墓場から盜んで來た澤山の人間の屍體のいい部分だけ集めて、これを接ぎ合はせ、アルプスの最高峯で、何億ヴオルトといふ空中電氣に叩かせると、その寄せあつめの屍體がピク/\と動き出す。遂に博士の研究が成功して、新しい生が始まつたのだ。ところが、この男の腦髓といふのが、恐
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