に文句をいうのなら、これから君がわしのところへやって来たらいいじゃないか。電話には、後《あと》もう出ないよ。では失敬」
金博士は、送受話器のスイッチをぴちんと切ると、髭をふるわせて呵々大笑《かかたいしょう》した。そして独言《ひとりごと》をいった。
「莫迦な奴らだ。目的地についたとき共軛回転弾が活動するようにと、時限装置を合わせるぞといってやったじゃないか。目的地といえば、戦場にきまっとる。あれをわざわざワシントンへ持って行く莫迦もないもんだ。アメリカ人というやつはどうしてああそそっかしいのだろうか」
それからごくりと咽喉《のど》を鳴らし、
「それにしても、ルスとベラントという燻製料理の名人を二人も同時に喪《うしな》ったことは、世界の大損失じゃ。そうそう、まだどこかにバイソンの燻製がまだ少し残っていたっけ」
金博士はにやりと笑って立上ると、冷蔵庫の中へ頭を突込《つっこ》んだ。
底本:「海野十三全集 第10巻 宇宙戦隊」三一書房
1991(平成3)年5月31日第1版第1刷発行
初出:「新青年」
1944(昭和19)年9月
入力:tatsuki
校正:門田裕志
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