このときは品川あたりが燃えていた。一番機の投弾だ。「また品川か」と思ったが、今夜はきっと違った狙いでやってくると察していた。品川が初まりで、渋谷の方へ伸びて来るかと思った。二番機、三番機と、少しずつ北へ寄って来る。いよいよそのとおりらしい。
◯激しいB29の焼夷弾攻撃が始まった。三千メートル位に降下している。照空灯の光の中にしっかり捉えられている。ものすごく地上砲火が呻り出す。永い間ためてあった砲弾を打出すといったような感じである。
月のある夜空を、火災の煙が高く高くのぼって行く、その煙雲のふちはももいろに染まっている。
川開きのような、下がってくるオーロラのような焼夷弾の落下である。
◯撃墜されるB29が火達磨《ひだるま》となって尚飛んでいるすさまじさ。そのうちに空中分解をしたり、そのまま石のように燃えつつ、落ちて行く。闇の方々より、拍手と歓声が起こる。そして地上防空活動も、士気大いにあがった。
◯放送でも「今日の敢闘は賞讃に値いする」といった。
◯焼けたところはよくわからぬが、千駄ケ谷もやられた由。夜ほのぼのと明ける。
五月二十五日
◯五反田の電気試験所のまわりがひどく焼け
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