所へ長靴を借りに行ったところで、本もののプーが鳴り、目がさめた。
私は神経がするどい方であり「警報を聞きのがしてはならぬ」と思って眠るので、こんな夢を見るのであろうが、ひとつ眠り方を変えなければならないと思う。
◯隣組の防火班長さん、なかなか実直な人で、うちの小路までいつでも「警報解除」を告げにきてくれる。この人も、二度目のときにはこなかった。寒いし、眠いし、それにたいしたことではないので、班長さんには無理をしてもらわぬ方がいい。
十二月十三日
◯名古屋、清水あたりへ敵機来襲。「地上施設に損害を受けた」という発表があったので、心配している。この日は、帝都へは四、五機ぐらいであった。ねえや[#お手伝いさん]のお父さんがきていて、初めてこの招かざる客を見る。
暁の三時に、また敵機一つ来る。毎夜つづけてくる。六日以来ずっとだ。夜の当番は、私がやることにした。敵もこず、警報だけ出て、寒さにぶるぶるふるえるだけで、おしまいだった、今晩は……。
十二月十六日
◯珍らしく昨夜は米機きたらず、したがって起きずに済んだ。六日以来毎夜きていたものがこないと、ちょっと調子はずれの形。人間は環境に
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