を打った。

 二月十九日
◯午後二時四十五分、突然B29、百機の帝都来襲となった。私にとっては少々不意打だ。家人はわりあいのんびり構えている。先日の艦載機千機の来襲で、千機という新記録を体験してからは、百機ぐらいは恐ろしくないらしい。そこで追いたてるようにしてフスマ障子をあけさせ、水筒等を運び入れ、昌彦も壕内へ移させる。
◯この日ラジオが停電で黙ってしまい、東部軍管区情報が途中で伝わらなくなり、敵機隊の動勢は耳で爆音等をさぐる外なくなり、ちょっと心細い想いがした。ダムでもやられたかと思ったが、三十分ほどして回復したので、まあよかったと思う。鉱石受信機を組立てておく必要を感ず。忙しいので当分つくれまいが、いずれやってみようと思う。検波器がないが、代りに安全カミソリの歯と猫ひげでやってみるか。
◯この日、とうとう硫黄島に上陸された。
◯十五、十六、十七、十九と五日間のうち四ヵ日空襲つづきで、日の経つのが速いこと。

 二月二十五日(土)
◯硫黄島も激闘、マニラも激闘。徹ちゃんどうしたか、未だに便りなし。気に懸ってはいるが、家人には一言も言わずにいる。朝子も今家に居ることだし。
◯午前四時
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