り。十四日目より床上に起き上る事を許されしが、この二週間例年になき発熱の日つづきたること故、寝ていることの辛さ、ことに枕に頭をつけての食事は、機関車の中にあるの想いにて苦しきことなりき。[#前妻のたか子は、一九二六(大正十五)年に結核で死亡。看病に当たった海野も感染し、いったんは回復したが、一九四二(昭和十七)年に海軍報道班員として南方に派遣された際、再発していた]

 七月二十六日
◯異状なし。
◯朝、常田君|漢口《ハンコウ》よりかえりて初めて来訪あり、話を聞く。精神力と幸運にて、かぼそき方の身体の所有者たる君は助かったり。(目下、千葉県)
◯安達君来り、かつぶしを土産にくれる。
◯女房大分よろし。安達君が私を叱りて軽挙を戒めるのでたいへん御きげんなり。
◯育郎ちゃん、ちょうど生後半年。今、うちに在り、元気にて、ひっくりかえりて腹匐《はらば》う事を覚えたり。父親の徹郎君は過日広島へ赴き、新就職。

 七月二十七日
◯浪速書房「心臓の右にある男」の校正後半出る。

 八月一日
◯B29、三十機編隊にて上空を飛ぶ。沖縄とガム島よりの米部隊なりと。昨年の爆撃の味は未だ新たなり。今日は安心し
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