はらせる。しかし客はなく、総じて飲食店に客影はなし。かつてのボロ市では、飲食店が大繁昌したものだったが。
十二月二十日
◯昨日は山田誠君来宅。二日がかりで用意したおでんを、家族一同と共に囲んで食べた。
◯東宝からの招きで、世田谷通りの例の梅蘭荘で御馳走になり、わが胃袋をおどろかせた。本日の会合の目的は、来年の東宝の特殊技術映画「文化都復興」の技術的相談を受けたもので、山崎謙太氏と大いに談じた。
◯英、一昨日から口の右下におできが出来、苦しんでいる。ゲリゾンをのんだり、アルバジルをつけたり膏薬を貼ったり、諸策を講じているが、まだ治癒のきざしはない。
◯特別配給の「光」三十本に、多少ゆったりとタバコをふかす。
◯本年もあと十日。
十二月三十一日
◯ああ昭和二十年! 凶悪な年なりき。言語道断、死中に活を拾い、生中に死に追われ、幾度か転々。或は生ける屍となり、或は又断腸の想いに男泣きに泣く。而も敗戦の実相は未だ展開し尽されしにあらず、更に来るべき年へ延びんとす。生きることの難しさよ!
さりながら、我が途は定まれり。生命ある限りは、科学技術の普及と科学小説の振興に最後の努力を払わん。
前へ
次へ
全172ページ中134ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング