か。恐るべし。
十月十九日
◯もうほとんど諦めていた徹郎君のことが、本日突然好転した。鹿児島から二通の手紙が来たのである。十月二日と同七日に差出した二通の手紙だ。それによると徹ちゃんは既に鹿児島に帰郷していて、防空壕こわしや薪割りに時間を潰しているとのこと。朝子[#長女]はもちろん無事。だいぶ腹がとび出して来て、まだ生れぬ子供が盛んに動く由。「まあよかった」と、英も大よろこび。誰の口からも歌がとび出す。ここ二ヵ月ぶりのこの通信に、一家は蘇り、笑声も聞こえる。もう安心だ。神棚にみあかしをとぼしてお礼を申上げる。
朝子が上京し得ぬことに英は大残念であるが、今日のあのたいへんな輸送状態では、仕方があるまい。徹ちゃんは近く上京するとある。もうすぐ顔が見られ話が聞けると「腕白弟妹ども」は大よろこびである。
快適な時間を持てるようになったことをしみじみうれしく思う。
十月二十一日
戦災無縁墓の現状が毎日新聞にのっている。
雨に汚れた白木の短い墓標の林立。「無名親子の墓」「娘十四、五歳、新しき浴衣を着す」「深川区毛利町方面殉死者」などと記されている。
仮埋葬は都内六十七ヵ所。既設は
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