ん来る。
◯おひる頃に橋本茂助氏と三男君来宅。炭をもって来て下さる。哲男の熱、少し下がりし由。シズエさんの婚礼は十二月二十一日に新郎の郷里にて盃してすみし由。
十二月二十八日(土)
◯暮なれどのんびりなり。皆することがないから(金がないので)自然のんびりするなり。来客も皆尻長なり。いつもの慌しい暮に比べると、のんびりだけはうれしいが、その底にあるものは好ましからず。
◯夜、竹田君来宅。「超人来る」二十三枚を始めて渡す。酒煙草に三千円かかるので、生活費として女房に二千円しか渡せない、そこで女房が酒と煙草をやめてくれれば代用食をくわないですむのにといわれ、閉口すとなげいてかえる。
十二月二十九日(日)
◯痰常体なり。昨夜のは歯から出たものと分る。
◯温さのこりて凌ぎよし、晴れて来る。
◯日曜なれば、暮も静かなり。川柳を繙《ひもと》くうちに昼となる。子供達、昨日の餅にて腹ふくれの態なり。
◯角田氏来宅。木々[#高太郎]邸の集りに出かける前によってくれしわけ。行けぬわけを申す。海苔五帖(渋谷百貨街)いただく。少しやつれ見ゆ。お子達、肺炎のあと蛔虫《かいちゅう》にて又いためつけられしとなり。
◯松平維石君来宅。原稿のことにていろいろと難儀な身の上ばなしを聞く。わが体験をはなし激励し置きたり。
◯延原さんが誘いに寄ってくれる。これも「自信なし自重したい」と弁じて謝す。江戸川さんの返金を頼んだ。きょうは蒲田で脱線して混み、そしてオーバーの釦《ボタン》をとられたため品川で乗換るのを見合わせて東京駅まで乗り、そこで乗客がすいたので床をさがして傷だらけになった釦をひろいあげた由。英が糸にてつける。
◯自由出版の使者来る。
◯開明社のお使い来る。「火星探険」が出来て六十部届けられた。印税の一部も。
◯エホンの稲垣さん来宅。自園でとれた南京豆一袋いただく。子供の大好物なり。原稿料を持参せられ、又次のものを頼まる。それと共に橋本哲男君の原稿をかえされ、意見を陳《の》べられた。甚だ参考になること故、近く哲男君へ伝えようと思う。
◯ふじ書房の近藤氏来宅。どうして居らるるか、素人のこと故、或いは失敗せられしかとこの間うちから心配していたところなので、うれしく会う。スローモーらしいが、仕事はまず順調にいっていると聞き安堵した。私の本は来年にまわるので、その挨拶に来られしわけ。
十二月三十
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