た。
(ああッ、僕は元の少年の姿になっている。時間器械が働かなくなったのか。元の世界によびかえされたのか。それとも……)
と、少年の姿に戻った僕は大狼狽《だいろうばい》であたりを見まわした。ところが僕の前にはさっきと同じく、十四五人の男女学生やカビ博士が熱心に僕を見つめている。
これは一体どうしたわけか。
興奮《こうふん》する学生
いつの間にか十五の少年の姿に戻された僕は、カビ博士とその学生たちの前で、さんざんに標本として勤《つと》めさせられた。
博士は、僕の健康や知能の欠点ばかりを探して、学生たちに講義をした。口を大きくあけさせて、虫くいだらけのらんぐい歯を見せさせたり、肺門《はいもん》のあたりにうようようごめている結核菌《けっかくきん》を拡大して見せさせたり、精神力の衰弱状態を映写幕の上に波形《なみがた》で見せさせたり、そのほかいろいろなことをやってみせた。僕は、なるべく聞いてないことにしたけれど、やっぱり博士の講義が耳に聞こえた。そして僕は、自分のからだが、まるで半分くさった日かげの南瓜《かぼちゃ》のように貧弱きわまるものであることに恥じ、且《か》つ自分で自
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