。なにしろ冷凍人間になってしまわない先に、その手を打っておかないと、後悔《こうかい》してもおいつきませんからね。どうぞその方法を教えて下さい。それは一体どうすればいいのですか」
「それはね……でもたいへんなのですよ、そのことは……」
 と、カスミ女史はいいにくそうにしている。
「早く教えて下さい。どんことでも、僕はおどろきやしませんよ。とにかく何かの合理的な手段によって、この国で当分暮すことが出来れば、たいへんうれしいのです」
 実は、僕は例の黄金をこの国から持ち出して、本当の東京へ土産に持って行こうという気を起こしているのである、しかしこのことはうっかり誰にももらすことが出来ない。そんなことが分ったら、それこそ僕は永久に冷凍されちまって壁の代用品にならなければならない。
「その方法の一つは、研究材料になるのです。つまり、あなたの場合なら二十年前の人間として、二十年前あるいはそれより以前《いぜん》の生活や社会事情や人格《じんかく》や嗜好《しこう》、言動《げんどう》、能力などといういろいろな事柄《ことがら》を研究する材料になることですね。それなら考古学者《こうこがくしゃ》が欲しいというか
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