僕は、やっと正気にもどつた。あたりを見まわすと、そこには鉄のような壁があるばかり。けんらんたる海底都市の市庁ホールもなければ、タクマ少年の姿も、僕の妻君だという女も、カビ博士も――いや、小さいひねくれたカビ博士である辻ヶ谷少年が、入口からこちらをのぞきこんで、しきりにさいそくのことばをつらねている。
「今日はもう遅いから、早く帰らないと、途中があぶないんだ。さかんに強盗《ごうとう》が出るというからねえ」
「強盗? 強盗てえ何かねえ」
「なにをいっているんだ、おい本間君。早くこっちへ出ろよ。このタイム・マシーンは故障になったといっているじゃないか」
「えっ、このタイム・マシーンが故障に。なぜ故障なんかにしたのか」
「えらそうな口をきくね。なぜ故障になったか、僕は知らないよ」
「お願いだ、辻ヶ谷君。どうかもう一度、海底都市へ送ってくれたまえ。頼む。頼む」
僕は辻ヶ谷君に合掌《がっしょう》した。
「だめだよ、僕を拝《おが》んでも……。停電になると厄介《やっかい》だ。さあさあ、早くこの地下室から出よう」
辻ヶ谷は、中へはいって来て、僕の手をとって引立てた。
「どうしてもだめか。もう一度だ
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