はないか」
 鋸《のこぎり》の目たて大会のように、きいきい声がはげしくおこった。が、そのうち別の声がすると、きいきい声はぴたりとしずまった。
「ではヤマ族君」と相手の声がいった。
「われわれは姿を見せるであろう。今まで姿を見せなかったのは、一つには防衛のためであり、また一つには君たち劣等《れっとう》な人類がわれわれを見て、気が変になるような事があっては困ると思ったからだ」
 劣等な人類――とは、何事であるかと、僕は少々むかむかしたが、それはおさえた。誰が気が変になんかなるものか。
「御念《ごねん》の入ったごあいさつです。気が変になんかなりませんから、早く素顔《すがお》と素顔とをつきあわせましょう」
 そういってしまってから、僕はしまったと思った。なぜなれば、こっちは潜水兜《せんすいかぶと》なんかをからだにつけているのだ。これをとって素顔を見せたりすると、たちまちあっぷあっぷで土左衛門《どざえもん》と変名しなくてはならない。
 そのときであった。僕はおどろきのあまり息がとまった。
 見よ、一せいにトロ族が姿をあらわした。例の背の高い土饅頭《どまんじゅう》みたいなものが、とろとろと下にとけ
前へ 次へ
全184ページ中138ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング