事件だ。しかし僕にどんな仕事がつとまるというのかね。僕は、君のいうところでは、すこし頭がつかれて、南瓜頭《かぼちゃあたま》らしいんだが、それでも役に立つのだろうか」
僕は、いささか皮肉《ひにく》なもののいい方をした。
「いや。それがね、君でなくちゃならないことがあるんだ。とにかく、あそこに見える海底の丘かげへ、このメバル号をつけて、ゆっくり話をするとしよう」
カビ博士は、下方《かほう》に見える乳房《ちぶさ》の形にこんもりもりあがった白い丘陵《きゅうりょう》へ向け、下《さ》げ舵《かじ》をとった。艇はゆるやかに曲線の道をとって、水中を降下していった。
「わざわざこんなところまで出かけないと、話が出来ないのかね。そんなわけがあるのかい」
僕は、きいた。
「そうなんだ。町では、こんなことはうっかり喋《しゃべ》れないんだ。おそろしい相手が、到《いた》るところに秘密のマイクをしかけてあるし、そのうえに、あやしい人物がうろうろしているんだからね。この間も、博物標本室の、象《ぞう》の剥製《はくせい》標本の中から、のこのこと出て来た諜者《ちょうじゃ》がいたからね、わしの教室だって、決して安全な場所
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