る夢では、杜自身が犯人であって、お千を殺した顛末《てんまつ》を検事の口から痛烈に論告されているところを夢見た。また或るときには、何者とも知れない覆面の人物が犯人となっていて、その疑問の犯人から彼が責《せ》め訶《さいな》まれて苦しくてたまらないところを夢見たりした。前者の場合よりも、後者の一方の夢がずっと恐ろしかった。
恐ろしい夢から覚めた彼は、きまって寝床のなかにいて、今度は現実にお千殺しの顛末を考え直すのであった。――果して半次がお千を殺した真犯人であろうか!
敷島の吸殻といい、煙草入れといい、それからまたあの前日の会見の捨《す》て台辞《ぜりふ》といい、半次の日常生活といい、十六貫もあろうというお千の身体を大木に吊り下げたといい、半次を真犯人と断定する材料は決して少くなかった。それにも拘《かかわ》らず、杜はなんとなく半次が真犯人でないような気がしてならなかった。
(どうしてそんな風に思うんだろう?)
杜は自分の心の隅々を綿密に探してみるのであった。別にこれこれと思うものも見当らないのだ。だがそのうちに、もしかするとこれかも知れないと思うことがあった。それは、あの事件の後で、杜が
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