《た》えたものと思う。そのうちに彼女の身体を吊下《つりさ》げている紐が切れ、下へ落ちてしまったのであろう。恐《おそ》らくそれは広い海の中であったことと思われる。彼女の繊細《せんさい》なる手首が紐でこすられて血が出、それが紐の切れ端に残ったことは確かだ。こうして彼女は、遂に敗れて一命《いちめい》を失ったものらしい。
 臼井は今も行方が知れない。
 それから最後に特筆大書《とくひつたいしょ》しておくべきは、田鍋課長が目賀野を証人として、烏啼に会わせたところ、目賀野がびっくりして烏啼を指して叫んだ。
「やッ、貴様は千田じゃないか」
 烏啼は、繃帯《ほうたい》を巻いた頭をすこし起こして、ふふんと笑った。
「貴様が千田なら、おい話せ、わしの姪《めい》の草枝はどこへ連《つ》れていった」
 千田と草枝が一組となって、いつも目賀野の下で働いていたことは、ずっと前から知られている。
「おれは知らんよ。課長に願って、細紐に残っているあの女の血に尋《たず》ねてみたがよかろう」
 と、烏啼はいって、むこうを向いてしまった。
 そんなことから、目賀野の姪の草枝こそ、看護婦秋草のことであり、彼女が或るときは烏啼に
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