先が裂《さ》けて切れているわ。それにさ、紐の先んところが赤黒く染《そま》っているが、血がこびりついているんじゃないのかい」
 書記の青木が、とがった口吻《くちぶり》から、気味のわるい言葉を次々に吐《は》いた。立合いの衆《しゅう》は、いいあわせたように二三歩後へ下った。
「よおし、何が入っているか、一つ鞄をあけてくれよう」
「よしなよ、気味が悪い。海へ捨てちまいな」
 瀬戸の妻君がいった。
「鞄をあけてから捨てても遅《おそ》くはないだろう。もし紙幣《さつ》が百万円も入っていてみな、わしらの大損だよ」
「ははは、慾が深いよ、工長《こうちょう》さんは……」
 その鞄が簡単にあかなかった。鞄の金具がどうかしているらしかった。そのうちにも臭気はいよいよぷんぷんとたまらなく人々の鼻を刺戟《しげき》したので、立合いの衆は気が短かくなり、とうとう斧《おの》を持ち出して、鞄の金具を叩《たた》き斬《き》った。
 鞄はぱくりと開いた。みんなはわれ勝《が》ちに中をのぞきこんだ。顔をしかめる者、ぺっぺっと唾《つば》を吐く者。中には仔猫の死骸《しがい》が入っていた。それと赤い紐が一本……。
 靴の先と棍棒《こんぼ
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