みもん》の大事件に発展するのではなかろうか。これは永年探偵等をつとめて来た帆村の第六感であった。
それから第三に、お化け鞄と、赤見沢博士が電車の中で後生大事に抱えていた鞄――その中には杉の角材四本などが入っていた方の鞄――この両者の関係が、まだはっきりしないのであるが、これもなかなか重大問題だと思う。なぜなればこの問題には、赤見沢博士の遭難事件が関係している。つまり赤見沢博士が怪漢《かいかん》のために襲撃されたのは、お化け鞄を持っていたことによるらしく思われる節がある。博士はお化け鞄を怪漢のために奪われたのではあるまいか。そしてその代りとして、只の鞄が博士の昏睡体《こんすいたい》の横に置かれてあり、共に目白署に収容されたのではないか。
帆村は、この二つの鞄を区別して考えていた。係官の中には、両者を同一の鞄とし、それが時には普通の鞄であり、また時には化けるのだと考えているようであったが、帆村はこの二つが別物《べつもの》だとしていた。それを区別するのに最もはっきりしている点は、赤見沢博士の昏倒《こんとう》している傍《そば》にあった鞄には、ちゃんと鍵がかかるようになっていたのに対し、かの
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