みつり》に行われた。捜査課長ともあろうものが、私立探偵の手を借りたなどという風評《ふうひょう》がたっては、田鍋警視は甚《はなは》だ困るのであった。
もっとも課長は、今夜の行動を、役所の用事とはしないで、お化け鞄と猫又《ねこまた》に興味を持つ帆村荘六を援助するための特別行動である――と、彼の部下二名に説明してあった。
帆村は、お化け鞄については、前章に述べたような見解を持《じ》していた。しかし彼は、この鞄の素性《すじょう》についてまだ突き留めていないことは、田鍋課長の場合と同じだった。
だが彼が、この事件に異常な興味を持って、解決に一生懸命の努力を払っていることは誰の目にも明白であり、従ってそのお化け鞄についての考察については、誰よりも深いものがあり、そのことを田鍋課長もはっきり認めていたればこそ、こうして帆村荘六のうしろについて行く気にもなったのである。正直な話が、課長としては、このお化け鞄事件ぐらいやりにくい事件は、本庁に奉職以来に一度も先例のないものだった。
今夜の行動は、帆村の示唆《しさ》するところに従って、田鍋課長が蹶起《けっき》したという形になっていたが、実のところ課
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