うとう目的のラジウムを引張り出したのだった。無論彼が白状せずともこのラジウムの力で、彼の身体の上に遠からずして潰瘍《かいよう》が現われるだろうことを私は初手《しょて》から勘定に入れていたのだった。
だが私も詰《つま》らんことから人殺しをしてしまった。今は後悔している。あのラジウムは、未だにそのまま持っている。それを金に換《か》えるためと、そして私の新しい世界を求めるため、今夜私は日本を去ろうとしている。多分永遠に日本には帰って来ないだろう。私はあれを金に換えた上で、赤い太陽の下に、花畑でも作って、あとの半生をノンビリと暮らすつもりである。
底本:「海野十三全集 第2巻 俘囚」三一書房
1991(平成3)年2月28日第1版第1刷発行
初出:「新青年」
1934(昭和9)年2月号
入力:tatsuki
校正:花田泰治郎
2005年5月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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