行機を操縦してドーヴァを越えて、この英国《えいこく》に飛んだのだ。そのとき、既《すで》に負傷していた。同乗させてやった中国人仏天青は機上で死んだが、おれは、いつの間にか、その先生の服を持っていたんだ。おれは飛行機を、夜間着陸させるのに苦しんだが、遂《つい》に飛行場が見つからず、その後は憶《おぼ》えていない。それ以後、おれの記憶が消えてしまったんだ。何をして監獄へ入れられたか、そいつは知らない。おい、アン――アン、どうした」
「あなた、最後のお願い……あたしのために、こういってよ……」
「アン、しっかりしろ。何というのか」
「……こう、いうのよ。ヒ、ヒットラーに代《かわ》りて、第五列部隊のフン大尉に告ぐ」
「えっ、第五列部隊のフン大尉に?」
「そう、そうなの、あたしのことよ。……汝は、大ドイツのため、忠実に職務を……あなた……」
「しっかりせんか、アン――いや、フン大尉。君の壮烈《そうれつ》なる戦死のことは、きっとおれが、お前の敬愛するヒットラー総統《そうとう》に伝達《でんたつ》してやるぞッ!」
福士大尉は、アンの耳に口をつけて、肺腑《はいふ》をしぼるような声で、最後の言葉を送った。
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