高度計は、たぶんくるっていないはずである。だから高度二万八千メートルのところがくさいことはたしかだ。しかし高度二万八千メートルの場所は、非常に広いのである。今飛んでいるところは、できるだけ竜造寺兵曹長のとびこんだと思われるところのつもりであるが、地点の推測の方はあまり正確でないので、まちがえたところを飛行しているおそれが多分にある。だから、この高度であたりをぐるぐると水平偵察をやっていれば、きっと例の魔の空間にぶつかると思われる。
 こうして両機は、その高度で水平偵察をはじめた。はじめは円を画《えが》き、それからだんだんと径を大きくして、外側へ大きく円を画きつづけるのだ。つまり螺旋形《らせんけい》の航路をとって探していくのである。望月艇と山岸艇とは、五十メートルの間隔を置いて飛んでいた。
 地上の時刻でいうと、午前九時四十分前後であったが、とうとう望月艇が、異変にぶつかった。
 山岸中尉は、テレビジョンの幕の上にうつる望月大尉の急信号により、望月艇が、異変にぶつかったことを知った。かねての手筈《てはず》により、山岸中尉は、目にもとまらぬ速さで切替桿《きりかえかん》をひき、二号艇の尾部へ
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