五十ミリを指すとはまったく信じられない……」
帆村の目は、らんらんと輝き、まるで山岸中尉がそばにいるのに気がつかないように見えた。
魔の空間
それからしばらくして、帆村はふっとわれにかえり、あたりを見廻した。山岸中尉の目とぶつかると、帆村はいった。
「兵曹長のこの最後の報告文は、おそらくこのまま信じない人もあるのでしょうね」
中尉はうなずいた。
「兵曹長はおかしいのだといっている者もあります。機体の故障が兵曹長にひどい恐怖をあたえたのだろうという者もあります。しかし私は竜造寺兵曹長を信頼している。そんなことで頭がどうかする兵曹長ではありません」
山岸中尉は、強い信念のほどを、はっきりしたことばでいった。
「この報告がまちがいないとすると、これはたいへんな事実を知らせてきているぞ」
帆村は頤《あご》をつまむ。
「それです。私があなたに来てもらったのは。あなたはこの報告文から、どんなことを導き出しますか」
山岸中尉は前にのりだしてきた。
「そうですね」
と、帆村は、これから言おうとすることのあまりの突飛さに、思わず大きく息をする。中尉は膝に手をおいて、帆村の唇を注視
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