ったのです」
 いつの間にか、そこへ帰って来ていた児玉法学士が弁明した。
「児玉君。まあ、君は黙っていたまえ。とにかく帆村君、君が変なことをいいふらすものだから、この村の善良な人たちは非常におびえているよ。注意したまえ」
 室戸博士は、叩きつけるようにいうと、席を立って向うへ行ってしまった。

   宇宙戦争の共鳴者

 帆村荘六に対するよくない評判が、だんだんとこの村にも、隣村にも強くなっていった。室戸博士は、その旗頭《はたがしら》のようなものであった。鉱山でも、帆村をよくいわない人達がふえた。
 だが、それと反対に、帆村荘六に非常に親しみを持ち始めた者もあった。少数ではあったが……。その一人は児玉法学士であった。あとの一人は、山岸少年の兄の山岸中尉であった。
 児玉法学士は、例の怪物が水蒸気のように消え去るところを目撃した、貴重な人物であるが、室戸博士はそれを信じてくれない。しかるに帆村荘六だけは、たいへんに真面目《まじめ》に、その話を聞いてくれ、そしてそれは貴重な資料だとほめてくれるのである。そこで児玉法学士は、帆村荘六が好きになったが、その他《ほか》見ていると、帆村の熱心なこと
前へ 次へ
全162ページ中48ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング