吸困難、または窒息《ちっそく》のおそれがある。
 思わざる危難がふりかかった。しかもその危険は刻々に大きくなろうとしているのだ。
 なんという気持のわるいことだろうか。
「よし、わかった。あとはおれにまかしてもらおう」
 と、山岸中尉は、歯切れのいいことばで言った。それにつづいて、中尉は胸の中で叫んだ。
(空中勤務に、予期しない困難が、あとからあとへと起るのは、有りがちのことだ。これくらいのことに、腰をぬかしてたまるか。危険よ、困難よ、不幸よ、さあくるならいくらでもこいだ。われら大和《やまと》民族は、きさまたちにとっては少々手ごわいぞ)
 空中勤務者は、あくまで冷静沈着でなければならない。空中で、これを失えば、自分で死神を招くようなものだ。
 その場合の死神は、ルーズベルトのおやじみたいなもので、こっちが死ねば、その死神といっしょに、ルーズベルトまでがよろこぶのだ。そんな死神を招いてたまるものか。冷静と沈着とを失ってならないわけは、ここにある。
 それから機長山岸中尉の、あざやかな指揮がはじまった。
 山岸少年に命じて、地上の本隊との間に無電連絡をとらせた。そして帆村に命じて、「魔の空
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