すぐには了解できることではなかった。
「まあ、ゆっくりお話しましょう。飛行楔の中で……」
 と、帆村は山岸中尉と山岸少年をうながして、飛行機の中にはいった。三人はめいめいの座席をえらんで、そこに腰をおろした。山岸中尉は、魔法壜の口をあけて、残りすくない番茶を、疲れている帆村にあたえた。帆村は感激して、ほんの一口だけうけた。
「そこで白根村の怪事件のことですがね。歩いていた山岸中尉が、急に歩けなくなったというのは、あなたが『魔の空間』の壁にぶっつかったからですよ。あの壁ときたら、軟らかい硝子《ガラス》かゴムみたいに、いくら体をぶっつけても怪我《けが》をしないかわりに、どんなことをしても破れるようなことはないのです。そんなに丈夫な壁なのです」
 帆村は手まねをまぜて、「魔の空間」のふしぎな性質について説く。
「あれが壁だとするとおかしいぞ。前方がはっきり見えたが、透明な壁だというのか……」
 山岸中尉が、熱心に聞きかえす。
「そうです。もちろん透明の壁です。ですから『魔の空間』が前に落ちていても、それが見えなかったのです」
「そうすると、白根村に、『魔の空間』が落ちたとして、その空間の中に
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