、夜はいっこうやってこなかった。
そのはずだ。ここは地球の上ではないのだ。「魔の空間」である。あたり前なら、二万七千メートルはなに一つ見えぬ暗黒界でなければならぬ。それにもかかわらず、こうして白昼のように物の形がみえているのは、ここが「魔の空間」なればこそだ。謎はますます深くなってゆく。
帆村の偵察《ていさつ》
帆村は十時間めに戻ってきた。
「どうした。心配していたぞ」
山岸中尉は喜んで、思わず帆村の手をとった。帆村の手は氷のように冷えきっていた。帆村の顔色は悪く、土色をしていた。そしてぶるぶると悪寒《おかん》にふるえていた。
「どうした、帆村班員。報告しない前に、なんというざまか」
山岸中尉は、声をはげまして叱りつけた。それは帆村の気を引立たせるためだった。
「はいっ」帆村は大きく身ぶるいして、姿勢を正した。だがつぎの瞬間、崩れるようにへたへたと坐りこんでしまった。
「電信員。艇内から酒のはいった魔法壜をもってこい」
「はい。持ってきます」
山岸少年は大急ぎで艇によじのぼり、兄にいわれたものを探しあてて下りてきた。
一ぱいの香り高い日本酒が、帆村を元気づけた。土
前へ
次へ
全162ページ中108ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング