ら先、どんなことが起っても、そのときはこうするという処置が考えられてあった。ただし処置なき出来事が起った場合は、運命にまかせることとしてあった。
山岸中尉の処置よろしかったために、彗星二号艇の乗組員は、さしもの難関を突破して、ふしぎに白昼の地上に着いた。しかし艇は着陸にあたって大破炎上した。
山岸電信員が、あらかじめ連絡をしてあったために、彗星二号艇の不時着の場所には、すぐさま本隊員がかけつけて火災を消し、艇の破れ目から四名の勇士を救いだした。
それから四名は、本隊に帰還した。
班長左倉少佐は、ただちに山岸中尉からはじまって、順々に隊員の報告を受けた。すべて愕《おどろ》くことばかりだった。中でも帆村荘六の怪鬼ミミ族についての報告は、班長をたいへんびっくりさせた。
「うむ、そうか。ミミ族の地球攻撃が、そこまで進んでいるとは知らなかった。この上は一日もむだにできない。ただちにミミ族をわが上空から追い払わねばならぬ」
そう言って、班長左倉少佐は、山岸中尉と帆村とを連れ、あわただしく隊の飛行機にのって、いずれかへ出かけた。
ストロボ鏡の発明
いつの間にか、地球をうかがっていた、不逞《ふてい》の宇宙魔ミミ族のことは、放送電波にのって全世界へひびきわたった。そして世界中の人間は、はじめて耳にする怪魔ミミ族の来襲に色を失う者が多かった。
「もうだめだ。ミミ族というやつは、地球人類より何級も高等な生物なんだから、戦えばわれら人類が負けるにきまっているよ。こうとしったら、穴倉でもこしらえて、食料品をうんとたくわえておくんだった」
「どこか逃げだすところはないかなあ、噴射艇にのって、ミミ族のおいかけてこない星へ移住する手はないだろうか」
などと、あいかわらず弱音をはく人間が、いわゆる文化国民の間に少くなかった。
そうかと思うと、てんでミミ族を甘く見ているのんきな連中もいた。
「ミミ族だって、地球人類をすぐ殺すつもりでやってきたわけじゃあるまい。なにか物資をとりかえっこしたいというんだろう。そんならこっちもミミ族のほしい物をだしてやって、交易をやったらいいじゃないか。喧嘩腰《けんかごし》はよして、まずミミ族の招待会を開いて、酒でものませてやったらどうだ」
「そうだ、そうだ。ミミ族だって、地球人類だって同じ生物だ。話せばわかるにちがいない。ひとつ訪問団をこしらえて、ミミ族の代表者を迎えにいってはどうか」
「それがいいなあ。とりあえず僕は、ミミ族におくる土産物《みやげもの》を用意するよ」
こんな連中も、多くではないが、のさばりでた。だが、こののんきな連中は、まもなく大きな失望に見舞われた。
それはミミ族の一隊が突然カナダのある町にあらわれて、その町を、住民ごとすっかり天空へさらっていってしまったという、驚くべき事件が起ったからであった。
もちろん警察飛行隊はすぐ出動して、嵐にまう紙屑《かみくず》のように、天空に吸いあげられていく町の人々や、木や、家や、牛や、馬や、犬などのあとをおいかけた。しかし一時間ばかりすると、どの飛行機ももどってきた。
彼らの報告は、きまって同じだった。あの奇妙な竜巻をおいかけていったが、そのうちどこへ消えたか、彼らの姿が全然見えなくなったそうである。そして晴れわたった青い空に、太陽だけがかがやいていたという。
こんな騒動が、世界のあちらこちらで起り、それはあとからあとへ世界中へ放送され、人々の恐怖は日とともにつのっていった。
ふしぎなことに、そういう事件が相ついで起っても、ミミ族は一ども姿を見せなかった。ミミ族の方では、よほど注意して、人類の目にふれることをさけたのである。
しかし、そうとは知らない騒動の町の学者たちは、帆村の報告した「ミミ族会見記」をうたがいだし、相ついで起る騒動も、じつは天災であって、ミミ族などという、宇宙生物のせいではないと力説する者さえでてくるしまつだった。
これに対して帆村荘六は、すぐには弁明しなかった。それというのが、彼はわが地球人類の目をくらますミミ族の裏をかいて、ミミ族の行動がはっきり見える器械――それを帆村は「電子ストロボ鏡」と名づけたが、その器械を設計し、その試作をいくつかやっては、新しく改良を加えていたから、たいへん忙しかったのだった。
この電子ストロボ鏡は、帆村の手によって、ついに完成せられた。そしてそれは大量生産にうつり、やがて各隊へくばられた。
この電子ストロボ鏡には、大小いろいろとあって、大きいのは天文台の望遠鏡くらいもあったし、一番小さいものは、手のひらに握ってしまえるほどであった。しかしその能力にはかわりはなく、肉眼ではとても見えないものが、はっきり見えた。
このストロボ鏡の一番大きいものは、左倉少佐のところにあった。
それを参観
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