「それは頃合をはかって聞いてみましょう。私は兵曹長が無事で生きているような気がしますよ」
そういっているとき、緑鬼たちは、窓のところへ来て、外からどんどん窓をたたきはじめた。早くここを開けといっているらしい。
「ほう、外部の気圧は七百六十ミリになっていますよ。これはあの緑鬼どもが、ちゃんと空気を『魔の空間』へ送りこんで、私たちが楽に呼吸できるように用意しているのです。ですから、とうぶん生命の危険はないはずです。では扉をあけましょうか」
と、帆村は心得顔《こころえがお》でいった。
緑人ミミ族
三人は、彗星二号艇から外へ出た。
緑色の怪物たちは、とびかかって来る様子もなく、おだやかに迎えた。
帆村は山岸兄弟よりも前に出た。そして緑色の怪物の中で、隊長らしく見える者の方へつかつかと寄った。
「せっかくあなたがたがよんでくださったものですから、やってきましたよ」
帆村は大きな声を出して、日本語でいった。山岸少年がびっくりして帆村の横顔をうかがった。
すると緑色の怪物たちは、急にざわめきたち、額《ひたい》をあつめて何やら相談をはじめたような様子であった。
山岸中尉が帆村に向かって何か言おうとした。帆村はそれを手で制した。そして、「それは後にしてください」と目で知らせた。緑色の怪物たちがどう出るか、いまは最も大事な時であったから、むやみなことをいって、怪物の気持を悪くしてはいけないと思ったのだ。
そのうちに、怪物は相談が終ったと見え、前のようにならんだ。そして隊長らしい者が、帆村の方へ歩みよった。
「あなたがいま言ったこと、わかりました。わたくしたちは、あなたのことばに満足します。これからいろいろ聞きますから、返事をしてください」
彼は日本語でしゃべった。それは妙なひびきを持った日本語であった。しかし原住民の片言の日本語よりは、ずっと調子がいい。緑色の怪物は、いつの間に日本語を勉強したのだろうか。
「はい、承知しました」
と、帆村は素直にこたえた。ふだんとちがって、いやにおとなしいのであった。
「僕たちからも伺《うかが》うことがありますが、返事をしてくださるでしょうね」
「はい。返事をします」
「で、君のことを何とよべばいいでしょうか」
「わたくしですか。わたくしはココミミという名です」
「ココミミ。ああ、そうですか」
と、帆村はこの奇妙な名
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