ままにして、地上へべったりと腰を下した。その大きさは、二階建の国民学校一棟が楽にはいるほどであった。だから、なかなか大きいものだった。
「隊長、攻撃だ。音響砲で攻めてみてください」
帆村が竜造寺隊長に言った。
警備隊員は、長い双眼鏡に引金をつけたような、奇妙な形の音響砲を手にとって、墜落した「魔の空間」に近づいていった。
「困ったなあ、中が見えない。帆村所長、なんとか処置がないですか」
竜造寺隊長が困った顔でふりかえる。
「うまくゆくかどうかわからないが、サイクロ銃で切ってみよう」
帆村は所員に持たせてあった、サイクロ銃をとりあげ、台尻を肩におしあてた。これは中性子を利用したすごい透過力のある銃である。あまり遠くまではきかないが、二百|米《メートル》以内なら、岩でも鋼板でもすぱりと切ってしまう力がある。そして近ければ近いほど、その透過力は一点に集中できる便宜があった。
帆村は大胆にも、そのサイクロ銃をいつでも発射できるように身構えて、ずんずん「魔の空間」に近づいた。
「所長、あぶない。一人では危険だ」
と、隊長が注意して、隊員とともに、すぐ後から追いかけた。と、帆村はどうしたわけか、五十米手前で、銃を持ったまま、ばったり倒れてしまった。
ミミ族の正体
「所長。どうした」
と、竜造寺兵曹長は、倒れている帆村のそばへかけよって、後からだき起そうとした。
「た、大したことはない。ミミ族は、墜落した『魔の空間』の内部から、神経破壊線を射かけてくるぞ。頭がくらくらとしたら、なにも考えてはいけない。考えると、脳神経が焼き切れるのだ。ぼんやりしていれば、間もなくなおる」
「ふうん。神経破壊線といえば、この前、私が『魔の空間』で射かけられて、半病人となったあれだな」
「そうだ。しかしまだ恐るべきほどの力は持っていないから、大したことはない。さあ、この間にサイクロ銃で、『魔の空間』の壁を焼き切るのだ。兵曹長、見ていなさい、サイクロ銃のすごい透過力を……」
こう言った帆村は、銃を肩につけ、引金をひいた。しゅうんというかすかな音が聞えはじめたと思うと、目の前に小山のように横たわっていた「魔の空間」の一点から、煙のようなものが濛々《もうもう》とあがりだした。
「見ているか、兵曹長。『魔の空間』の壁がさけてゆく……」
なるほど、そのとおりだ。鯨の腹に、磨きすました
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