「わしのいう他の者は、火星人の如き者かもしれない。しかしわれらの研究によると、火星人ではないように思われる節がある。いずれそのことは火星へいって取調べるつもりだが、わしだけの考えでは、もっと遠方から飛来して来た者ではないかと思う。わしは今仮りにこの油断のならぬその者を、X宇宙族という名をもって呼ぶことにしよう」
「X宇宙族。なるほど、こいつは戦慄的《せんりつてき》な名前だ」
 と、さっきから黙りこくっていた魚戸が、顔をあげて呟《つぶや》いた。
「しかしそれは合点がいかぬですなあ。一体わが太陽系では、生物が棲息《せいそく》しているのは、わが地球と、その外に若し可能ありとすると火星しかない。他の遊星には、生物の棲息できる条件がないということを聞いていますぜ。すると火星以外のどの遊星に、そのX宇宙族とやらいう生物が棲息しているのですかなあ」
 ベラン氏は、信じられないという顔付であった。
「さあ、X宇宙族が、どこから発足した生物だか、わしは今説明する材料を持って居らない。だが、今いったことは、多分間違いないものとひそかに信じているのだ」
 と、艦長リーマン博士は前言を再確認したあとで、特に言
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